学会事務局より

2012年1月の記事一覧

2012年 会長あいさつ

日本社会教育学会  末本誠会長
会長 末本 誠 (神戸大学)

 日本社会教育学会は再来年で、60周年を迎える。人間でいえば還暦である。60年を経て、これからの学会そして社会教育研究は、どのように展開していくのだろうか。

 思えばこの60年間、日本の社会教育研究は教育基本法と社会教育法を基軸に、活動を展開してきた。そして今日、これら法制度的条件の委縮を受けて、社会教育の研究も実践も元気を失っているように見える。

 しかしこれは国際的な動きとは、矛盾する。国際的には前世紀後半に「成人教育」に関する用語が爆発的に増大し(ボーア)、21世紀は成人教育の時代(ドミニセ)ともいわれている。日本での生涯教育や生涯学習の議論は、大きくはこうした世界の流れの一部に位置している。社会教育の出番は、これからなのである。

 政治、経済的な激動の中で、「社会」を冠した社会教育がカバーすべき領域は拡大している。東日本大震災のその後も、福島原発事故による放射能汚染の問題を含め、依然として深刻である。その中で社会教育研究に何ができるのか。創設から60年を経た再生の時期、日本社会教育学会は改めて重い課題を背負っている。

 学会は一つの結社である。結社にはメンバーが集結するための、共通のミッションがなければならない。先に述べた教育基本法を中心とする法規範は、いわばそのようなミッションを代弁する機能を果たしてきた。しかし今日、会員が共有すべきミッションとは何かが、改めて問われている。日本社会教育学会は、この問いに応えようとする人々の集まる場として、この時代における社会教育の役割とは何かを明らかにすべく、原理=実践的な研究に取り組んでいく。